2008年5月30日金曜日

【声明】日本政府は国民投票の結果を認めるべきではない

本日、ビルマ市民フォーラムは、ビルマ軍事政権の国民投票の結果発表ならびにアウンサンスーチー氏の自宅軟禁が延長されたことをうけ、声明を発表いたします。


ビルマ市民フォーラム
事務局長 渡辺 彰悟(弁護士)



声明:日本政府は国民投票の結果を認めるべきではない
ビルマ市民フォーラム
2008年5月30日

5月10日、軍政は一部のサイクロン被災地域を除き国民投票を予定通り実施し、26日には国営放送を通じて最終投票率98.12%、賛成票92.48%に達したと発表した。

5月2日~3日に同国を襲ったサイクロン「ナルギス」による死者・行方不明者は13万人を超え、被災者は260万人にものぼると見られている。23日、潘基文国連事務総長の説得により軍政はようやく国際社会からの支援受け入れを許可したが、未だ最大被災地のデルタ地域においては支援スタッフの移動や物資運搬に制限が加えられている。既に雨季に入った被災地では、支援の遅れに伴い、コレラや感染病が急激に広がっている。現在進行形の二次災害の拡大は、もはや軍政による「人災」といわざるを得ない状況である。

こうした中、軍政は国民投票を実施し憲法草案は承認されたと発表した。しかしながら、この国民投票は1990年の総選挙の結果を完全に無視し、当選議員・民主化勢力・少数民族代表者らとの対話もないまま、法的な正当性に欠ける軍政が自らの権力維持を第一の目的に強行した、「政治的儀式」にすぎない。投票前からビルマの国民は賛成票を投じるよう様々な形で強要され、投票所でも不正が行われていたとの証言が数多く報告されている。98%を超えたとする投票率にも客観性・現実性はなく、92.48%の賛成という数字も国民の意思とは程遠いものであることは明らかである。

サイクロン被災の影に隠れ、平然と人命を軽視し、自らの動きを合法化しようとする軍政のこうした茶番劇は許されざるものであり、ビルマ軍事政権が発表した国民投票の結果を認めてはならない。これを受け入れてしまえば、ビルマの民主化・連邦制の確立が遠のくことは明白である。

国際社会はサイクロン被災者支援の影で、この国民投票の結果をビルマの国民による意思表示として決して認めるべきではない。とりわけ、軍政への対話による民主化の促進を働きかけてきた日本政府においては、この“非民主的プロセス“による結果は受け入れられないと軍政に明確に伝えるべきである。
また、軍政の「合法化」を許すことなく、自宅軟禁下にあるアウンサンスーチー氏を早期に無条件で釈放し、民主化への建設的な対話を進めるよう、国際社会は一致団結して軍政を説得するべきであり、日本政府はその説得のためのイニシアティブを発揮するべきである。

加えて、ビルマ市民フォーラムは、軍政がアウンサンスーチー氏の自宅軟禁期間を延長したことについても強く抗議するとともに、日本政府が釈放にむけて軍政にこれまで以上に強く働きかけることを要請する。

以上